大判例

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東京高等裁判所 昭和53年(行ケ)212号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決取消事由の存否について検討する。

1 構成上の相違に関する主張について

(一) まず、本件考案における「隅部材」について検討する。

成立に争いのない甲第四号証(本件考案の実用新案公報)によると、(イ)本件考案の明細書中、考案の詳細な説明の項には、<1>「隅部材」について、「この考案は……枠柱1の端と枠桟2の端とを、別に成型した直角状の隅部材8の嵌入によつて連結し、枠型に組立てたものである。」、「枠柱1と枠桟2との隅部を直角状の隅部材8にて接続固定し枠組みする」との各記載があり、本件考案の願書に添付の補正後の図面(以下単に「添付図面」という。)第二図には、別紙図面(〔編註〕省略)(1)の第二図のとおり、基部の直方体部分に隅部材の符合8が付されている一方、「突起」については、「その端口部に前記隅部材8の各突起9、9をそれぞれ嵌入接着する。」との記載があつて、「隅部材の各突起」とされており、(ロ)さらに、その実用新案登録請求の範囲の項には、枠柱1、1と枠桟2、2の対向端部内に「隅部材8の各突起9、9をそれぞれ嵌入固着し」と記載されているところ、これに、普通には、突起とは、ある物から部分的に突出したものを指すこと(明細書における用語は、その有する普通の意味で使用し、かつ、明細書全体を通じて統一して使用すべく、特定の意味で使用しようとする場合においては、その意味を定義して使用すべきものである。実用新案法施行規則第二条、様式第三の備考8参照)を併せ考えれば、結局、「隅部材」とは、本件考案においては、その各突起により、枠柱と枠桟とを枠形に対向させたときに形成される対向端部、すなわち、隅角部に、嵌合して枠柱と枠桟とを接続固定する部材をいうと解するのが相当である。したがつて、これがその一部である直方体の基部そのもの、換言すれば、これと一体を成す突起を除いた部分のみを指すとすることは当を得ない。

(二) 次に、本件考案における直角状隅部材における「直角状」の意味について考える。

前掲甲第四号証によると、本件考案の明細書中には、「直角状」の意味について具体的に叙述した記載はなく、ただ、添付図面の第二図にその具体的構造が示されているに過ぎない。そこで、隅部材における基部(隅部材のうち突起を除外した部分)についてみるに、まず、「直方体」と「直角」とはそれぞれ別個の観念であつて、直方体自体を全体として直角ないし直角状と表現することは通常ないのみならず、本件考案の隅部材は、添付図面によると、引違戸枠で上下の桟にガイド用の突隆部16を賦形しておく場合(明細書第一頁右欄第一六行から第一八行参照)には、隅部材の基部にも、ガイド用の突隆部が賦形されてあるべきこととなり(別紙図面(1)の第一図及び第二図中の両図面対照)、この場合には、基部が直方体でないことを併せ考えると、直角状とは隅部材の基部が直方体であることを意味すると解するのは相当でない。

ところで、隅部材は、前述のとおり、枠柱と枠桟とを連結する基体と突起とから成る部材を指すと解すべきであるから、隅部材の基部には枠柱と枠桟に嵌合する突起が、戸枠を通常の位置に設置した場合における上、下方向及び横方向、すなわち、直角方向に位置するよう設けられており、それ以外に直角状と呼ぶにふさわしい構成は見当らないことを併せ考えると、本件考案にいうところの直角状とは、隅部材の基部に設けられている一対の突起が直角状をなしていることを意味し、この突起によつて枠柱と枠桟とが直角状に接続固定されるようにしたものと解するのが相当である。

右(一)及び(二)に述べたところを要するに、本件考案における直角状隅部材とは、一対の突起が直角状に隅部材の基部に設けられており、この基部を枠柱と枠桟との組立てによつて形成される隅角部に嵌合して、枠柱と枠桟とを直角状に接続固定するものと解すべきである。

(三) そこで進んで、本件考案の直角状隅部材と引用例のものとの対比について検討する。

成立に争いのない甲第二号証(引用例)によると、引用例に記載の隅部材である隅角結合体(Zapfen)(審決においては、本件考案の直角状隅部材に対応する引用例の隅部材を「結合ほぞ」というが、「ほぞ」自体は、木材などの二部材を接合するために一部材の端に造り出された突起を指称するところ、引用例の隅部材は、このような突起自体をいうのではなく、隅部結合ブロツク、コーナーピース等とも呼ばれうるので、以下「隅角結合体」ということとする。)とは、一対の突起が、直角状に隅角結合体の基部に設けられており、枠柱と枠桟とを枠形に組立てることによつて形成される隅角部にこれを嵌合して、枠柱と枠桟とを接続固定するものであることが認められる(この点は原告も明らかに争わない。)。

これに対し、本件考案の直角状隅部材は前記のとおりであつて、本件考案の明細書を子細に検討しても、添付図面(別紙図面(1))第二図に示された基部が直方体のもののみに限定される事由もなく、同図に示されたものは、本件考案の一つの実施例に過ぎないものと解され、これを左右すべき資料はない。

そうすると、本件考案の直角状隅部材は、引用例における隅角結合体をも包含するから、両者の間には構成上の差異がないものというべきである。

なお、この点について原告は、本件考案について、その出願後手続補正によつて実用新案登録請求の範囲を減縮し、引用例における隅角結合体のような構成のものを削除した結果、実用新案登録がされたのであるから、引用例のものとは構成が異なる旨主張する。なるほど、成立に争いのない甲第三号証の一、二及び前掲甲第四号証によると、本件考案の出願当初の願書添付の図面には、建具枠の隅継ぎの仕方をいろいろな場合について例示したAないしEの五個の図が包含されていたものを、昭和三五年九月一九日付手続補正書により、添付図面(別紙図面(1))の第二図のとおりに補正され、隅部材については、その内容は、補正前のDの図に示されていた隅部材が補正後の添付図面第二図の右側に示された斜視図として残され、その余のA、B、C、Eの各図に記載の隅部材は削除されたことが認められる。しかし、前掲各証拠によれば、右のA、B、C、Eの各図に記載の隅部材は、もともと、隅角部に嵌合する基部を示していないものであつて、基部がL字形をした隅部材ではないことが認められる。したがつて、右の出願後の経過に関する事実は、前示判断を左右するものではない。

(四) 以上のとおりであるから、原告の1の主張は、採用できない。

2 作用効果の相違に関する主張について

原告のこの点の主張は、本件考案における直角状隅部材と引用例における隅角結合体とがその構成において異なることを前提とするものである。しかし、1において検討したとおり、本件考案における隅部材は引用例における隅角結合体を包含するものであるから、前者の有する作用効果は後者のものも有することは明らかである。本件考案の直角状隅部材における成型の際の合成樹脂の収縮に関する効果の主張についても、同断であり、しかも、本件考案の明細書に全く記載のない事項に関るものであつて、検討の余地はない。

したがつて、原告の2の主張も、採用できない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

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